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2017-05-22(Mon)
WEB接客ツールは、コンバージョン率(CVR)と顧客満足度(CS)の両方で効果が見込める新施策として注目を集めています。コストやメリット、今後の課題など導入前に一通り整理しておきましょう。
WEB接客ツールには「チャットタイプ」と「バナータイプ」の2種類があり、業種や業態、目的にマッチしたツールを選ぶことが大切です。
チャットは電話やメールに変わるコミュニケーションツールとして、日常的によく使われています。LINEやSkypeなどが有名ですが、社員同士の連絡用といったビジネスユースに特化したチャットも広く普及しています。チャットタイプのWEB接客ツールはその名のとおり、チャットを使ったコミュニケーションが主体です。ユーザーの疑問や質問に対して、オペレーターが臨機応変に回答しながら、WEB上での“おもてなし”を実現します。
商品案内やクーポンなど、ユーザーの特性に合わせたバナーを表示するWEB接客ツールです。たとえばユーザーの行動履歴から趣向を判別し、最適なバナーを表示することで、購買意欲が高いと思われるコンテンツへの誘導が可能です。ユーザー側から見れば従来の一方的な情報提供と違い、自分のために提案や案内をしてくれているという“One to One”の接客が感じられ、気分よくクリックできます。
ネットショップを訪問したとき、画面上に表示される小窓を目にしたことはありませんか?「なにかお探しですか?」など、呼びかけのメッセージが表示されていれば、それがチャットタイプのWEB接客ツールです。
ECサイトでの問い合わせは在庫確認、返品・交換希望、クレームなど内容が多岐に渡っており、ユーザーごとに迅速かつ柔軟な対応が求められます。本来、購入前の問い合わせは大きなチャンスなのですが、対応が好まれなければ他店に逃げられてしまいます。
それを回避するために必要なのが、ユーザーと会話です。同じ非対面なら電話よりもチャットの方が問い合わせのハードルが低く、SNSに慣れた若年層にも受けがいいはずです。WEB接客ツールを導入すれば、チャットならではのレスポンスのよさで、スムーズなコミュニケーションが可能です。WEB上での “おもてなし”によって、顧客満足度(CS) アップを実現できます。
一方、バナータイプのWEB接客ツールは離脱防止に役立ちます。実店舗では何度か利用していればスタッフと顔なじみになり、おすすめ品を教えてくれたりするものです。ネットショップの場合はどうでしょう?基本的には初訪問でも再訪でも、誰もが同じ扱いです。もし、再訪であることを理解してくれて、自分に対する特別な提案や紹介があれば、また買いたいと思うのではないでしょうか。
不特定多数ではない“One to One”マーケティングの手法で、ユーザー好みのコンテンツに誘導するのが狙いです。離脱防止と同時にコンバージョン率(CVR)アップが期待できます。
WEB接客ツールが流行っている理由のひとつに導入のしやすさがあげられます。たとえば問い合わせページの最適化を図ろうとすると、該当ページはもちろん、場合によってはサイト全体の変更も余儀なくされます。
しかし、チャットタイプのWEB接客ツールであれば指定されたタグを入れるだけで実装できるため、すぐに運用をスタートできます。
はじめて導入する場合は、効果が読みにくい部分もあるので、低価格のWEB接客ツールから検討するのもいいでしょう。数あるWEB接客ツールの中からリーズナブルかつ利便性の高いものを3つピックアップしてみました。
「chamo(チャモ)」
http://chamo-chat.com/
シンプルで使い勝手もよく、業種を問わず導入しやすいチャットタイプのWEB接客ツールです。訪問回数、時間、参照元ページの設定により、訪問者にチャットを即す「自動話かけ(プッシュ機能)」を備えています。低価格ながらMAツールとの連携も可能で、リードのチャット利用を視覚化できます。
「Zendesk chat」
https://zopimjp.com/zendesk-chat/
直観的なUIですぐに使える、チャットタイプのWEB接客ツールです。日本語や英語を含めた30言語に対応し、自動翻訳機能(Google Translate)を備えているため、海外からの問い合わせにも便利です。上位プランへのアップグレードにより、目的に応じたさまざまな施策を追加できます。
「ecコンシェル」
https://ec-concier.com/
無料でも使えるバナータイプのWEB接客ツールです。ECサイトに特化しており、シナリオをもとに訪問者に応じたコンテンツの表示で、コンバージョン率アップが期待できます。
ABテストなど高性能AIによる自動判別機能を備え、拡張性も高さも魅力です。
ここまでいいことづくしのWEB接客ツールですが、顧客ファーストを優先した施策ならではの課題もあります。
チャットタイプの場合は専任のオペレーターが必要です。そして、いつ問い合わせがあるかわからないので、営業中は常時待機していなければなりません。従来の問い合わせページであれば、翌日回答でも問題なかったのが、チャットでは即時回答が常識かつマナーです。
また、WEB接客ツールを導入後、問い合わせが急激に増え、人員の追加を迫られるケースも考えられます。もうひとつ付け加えると、オペレーターは誰でもいいというわけではなく、コミュニケーション能力に長けた人材でなければ目的を果たせません。
いずれにしても、WEB接客ツールの導入と同時に人件費は増えるため、トータルでのランニングコストを再確認する必要があります。
バナータイプの場合、表示するバナーをどう設定するかが課題になります。コンテンツマーケティングのノウハウを持っていれば、その経験に裏付けされたバナー表示の最適化でコンバージョン率(CVR)を上げられますが、明確な戦略なしに行うとWEB接客ツールの導入が逆効果になる可能性もあります。
今後、WEB接客ツールの進化に欠かせないのが「AI(人工知能)」です。IoTと並んで注目を集めている先端技術はWEB接客ツールにどのようなイノベーションをもたらすのでしょうか?
接客とAIの実例として、よく知られているのはソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」だと思います。店頭に立ち、店員の代わりになって、あいさつをしたり、客の要望を受け付けてくれます。目の前の客の言葉や行動を、高性能のカメラ、マイク、センサーで認知し、膨大なデータの分析結果から最適な反応を示すことで、人間とロボットのコミュニケーションを実現しています。
もちろん、繊細な感情の理解などまだまだ改良の余地はありますが、ここ数年のAIの普及と開発スピードを考えれば、SFの世界が現実になる日は近いといえます。
ECサイトには昼夜関係なく、買いたい、欲しいと思ったときに客が訪れるので、年中無休・24時間営業というのが常識です。ところがWEB接客ツールを導入したとしても、オペレーターが人間である以上、営業日時の範囲内での対応になってしまいます。
実際、今聞きたいことを質問しようとしているのに返事は翌営業日以降と言われると、ストレスがたまりますよね?
もし人間に変わってAIが対応すれば、無人のまま24時間対応できるフルオート接客が可能になります。すでにAIが実装されているWEB接客ツールもありますが、100%の満足を得られるものではありません。
しかし、フルオート接客を目標とするならば、AIとWEB接客ツールは切り離せない関係であり、今後の動向に注目したいところです。
ECサイトの例でWEB接客ツールを説明してきましたが、ここからはBtoB(企業間取引)での導入と活用方法に目を向けてみましょう。
BtoBの特徴として下記の2点があげられます。
ひとつずつ段階を踏みながら、双方合意の上、ようやく契約に至るというイメージでしょうか。売る側も買う側も、先を急げば失敗しやすいことをよく知っているため、長期戦は想定内です。
WEB接客ツールは営業目的というより、既に取引のあるユーザーとのコミュニケーションを円滑化するために導入するというのが現実的です。サポートの窓口として、チャットタイプのWEB接客ツールを導入すれば、FAQやマニュアルでは解決できない問題に対しても、短時間で処理できます。
BtoBにはよくも悪くもビジネスライクな距離感があります。具体的な商談に入ってしまえば、その距離はぐっと縮まりますが、まだ接点を持って間もない段階で繰り返されるのは本音の探り合いです。
営業担当者の立場になれば、いかに相手のニーズを引き出せるかが最初の課題です。
対面での打ち合わせならば、これまで磨き上げてきた営業テクニックで、購買につながるニーズを引き出せると思います。
しかし、サイトの問い合わせページでは経験も話術も発揮できず、見積りや資料請求など定番のやり取りに落ち着いてしまいます。その流れで商談に持ち込めばいいのですが、話が切れてしまった場合は相手の実像が見えないまま「なぜダメだったのか?」という疑問が残るだけです。
そこでチャットの利用を考えます。
チャットであれば普段の会話に近い形のため、本音を聞ける可能性が高くなります。また履歴も残るので、交わされた言葉の中からニーズを見つけることもできるはずです。
と、ここまで説明してきたWEB接客ツールですが、是非導入してもらいたいのがIT企業です。
つい先日、こんなことがありました。
知り合いの社長さんが、あるセキュリティシステムの設定の件でメーカーに問い合わせる際、WEB接客ツールを使っていたのです。その方はITに疎く、連絡のほとんどが電話で、メールを打つのも苦手な人です。メーカーのサポートダイヤルがあるにもかかわらず、チャットで向こうの担当者と会話していたのには正直驚きました。
理由を聞くと、こんな答えが返ってきました。
売る方はITの専門家ですが、使っている方は必ずしもITに詳しいわけではなく、むしろ苦手というケースは珍しくありません。機能や操作方法など話が専門的になればなるほど、理解のズレが生じやすいはずです。
つまり、WEB接客ツールがユーザーと企業の経験差、知識差を埋めてくれるわけです。
説明が難しいIT製品・サービスを取り扱っている場合、ユーザーの理解が深まるほど、良好な関係を築きやすくなります。
いかがでしたか?これまで受け身の姿勢だったWEB上の接客を変えるには、もう一度ユーザーの立場で各施策を見直す必要があります。WEB接客ツールの導入は気の利く“おもてなし”と先回りの“One to One”を実現しながら、顧客満足度(CS)、コンバージョン率(CVR)ともに向上が見込めます。
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