Column
2017-10-02(Mon)
『えんとつ町のプペル』はお笑い芸人・絵本作家の西野亮廣氏とその絵本制作チームのメンバーが制作した絵本です。発売1ヶ月前にAmazonの絵本ランキングで1位になったり、クラウドファンディング開始一週間で1000万円以上の資金が集めたり、全ページをネット上で無料公開したりと異例の取り組みを多数行い、絵本としては驚異的な30万部超えを果たしています。
これらの突飛な施策は、どれも単なる話題作りではなく緻密な売り上げ戦略の一端です。そこで、ロングセラーの多い絵本界でどのように莫大な売り上げを確立したのか、炎上した無料公開に着目して解説します。
『えんとつ町のプペル』が発売されてから、ネットで全ページ無料公開に踏み切った西野氏。もちろん「買った人が損をする」「なぜそんなことをするのか」と世間からバッシングされ、炎上しました。しかし、これには絵本ならではの戦略があったのです。
今は節約のため、親は図書館で借りたり、本屋で立ち読みしたりしてから絵本を買います。買ってから「内容がいまいちだった」とならないため、リスクヘッジしているのです。あるいは自分が昔読んで好きだった本を買います。お母さんは自由に使えるお金や時間が多くないもの。だから絵本は40~50年前のベストセラーが売れ続け、ロングセラーが多いのです。
そこで、西野氏は「だったら無料公開して、気に入ってもらってから買ってもらおう」と考え、無料公開に踏み切りました。絵本は子供に見せながら読み聞かせをするもの。50回くらい読み聞かせて、親がセリフを全部覚えてしまうことも珍しくありません。そのためネット上で無料で読めたとしても、絵本は子どもに“読み聞かせる”ものだからこそ、最終的には絵本そのものを買います。画面上で公開しても、それが購買抑制にはならないのです。むしろ、そこで内容をチェックして良ければ絵本を買ってくれるので、メリットしかありません。
結果的に無料公開後に売り上げはうなぎのぼりに。Amazonでは書籍総合ランキングで1位になりました。殺到したクレームも「それでは絵本を売れなくなってしまう」といった内容ばかりで、購入者からのクレームはほとんどなかったとのことです。
ただし、この無料公開はゲリラ作戦でした。施策の最終ジャッジは社長などのリーダーですが、そこで考え方が違うと異例の施策ほどNGになりやすいものです。そこで、この無料公開は、実はゲリラ的に行われました。担当編集者と西野氏の間で秘密裏に動いたそうです。
担当編集者も西野氏から無料公開の提案を受けて承諾したものの、それは相当の覚悟を決めてのこと。西野氏は
「やってみてクビが飛ぶんだったら、一生面倒見るから。だけどたぶん、クビは飛ばないから」
と言って説得したそうです。初日は出版元の幻冬舎に苦情の電話がたくさんかかってきて相当叱られたそうですが、その後は売り上げがグングン伸びて無事評価されるに至りました。
今の社会でモノを売るためには「あざとさ」と「やさしさ」の両方が必要です。この『えんとつ町のプペル』の戦略にはその両方がありました。「あざとさ」と「やさしさ」が両輪で機能すると、大きな売り上げに繋がります。ユーザーに寄り添いながらも、しっかり売り上げを確保できる戦略を軸に据えておく。サービスのプロモーションでは、この2つの要素を踏まえて企画を立てると良いでしょう。
ビーダッシュではこうしたプロモーション企画のご提案も行っております。ぜひお気軽にご相談ください。
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